32お父さん病気なんです

剛はまさに激昂中だった。

「お義父さん、落ち着いてください。いったいどうしたんですか?」

「こいつがよー、まったく話聞かないんだよ。オレがせっかく謝りに来てんのに、まともに話しやしない」

そりゃそんな顔で怒鳴りちらしたら無理もないだろう。

剛は体調不良でますます起きて来ない美恵子を心配し、メールがダメならとりあえずウソでも直接頭を下げようと考えたのだった。剛なりの正義感だった。

ただそれも束の間、いつもの短気が出てしまい「せっかくオレが頭下げてるのに話し合いもしないのか!!」と怒鳴りちらしていた。そして即座に通報・・・。

美恵子の体調不良は、まさにこの剛の近隣トラブルが原因なのに。そこがわからないのだ。

美恵子はこの界隈に昔から住んでいるジジババの、あることないことの噂話、まさに近所の目が怖いのだ。

怒りがおさまらない剛を、ヨッシーはどうにかなだめようとした。娘だらけの亀岡家にとって、次女の夫であるヨッシーは剛にとても信頼されていた。

なのに今回ばかりはまったく聞く耳もたず、声をあらげ続けた。これもボケの症状なんだろうな、もう今は何を言っても無駄なんだろうな思った。

ただ、これを機会に絶対に絶対に病院に行かせなきゃ。行って認知症と診断させなければ、本人もお隣さんも説得出来ないと思った。

そしてヨッシーは警察の前で剛に土下座したのである。土下座なんてきくのかな? と思いつつも、日本人としてこれしかないと本能的に思った。いや、警察もいたからかな?

なんか家族を守るための演技もあったかもしれない。「お義父さん、お願いですから病院に行ってください。この通りです」

剛はとくに頭を上げろとか、そこまでするなとか言わなかったと思う。ただただ時が過ぎるのを待った。

土下座がきいたのか時間が解決したのか、剛は気が付くといつもの感じに戻っていた。

「分かったよ。病院に行けばいいんだろ」病院へ行くことを承諾してくれたのである。

すると美恵子は即座にその場で病院に電話をかけ始めた。お隣も警察もいる前で予約した方が、お父さん病気なんです! だから仕方ないんです!と彼らに対して説得力がある。そして剛も後に引けないと思ったからだ。

これでやっと一歩前進したかと思われた。

口グセはバカヤロー

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