50この家から出ていけ!

しかも剛は、非常に興奮していた。激昂して大声で怒鳴り散らした。

「そんなことわざわざ言いに来たのか!」

「オレはそんなことをヨッシーに頼んでいない!」

同じ話の繰り返し。まったく説得が出来ない状況でキリがない。

相変わらず我が強く、すべて自分が正しくて人の話を一切聞かないのだ。

挙げ句には、口を挟んだ美恵子に対して

「お前はどっちの味方なんだ? えっ? 出ていけ! この家から出ていけ!!」

更に大きな声で怒鳴り散らした。

「もう、何で分からないの!! もう疲れたわよ! あなたと一緒にいられない。死にたいわよ」美恵子は半泣きで訴えた。

それは剛に対しての演技だったかもしれない。あなたのせいで死にたいと言えば、少しは優しさを取り戻すかもとの期待を込めて。

が、そんな簡単なものではなかった。剛はまったくもってひるまない。まるで聞こえていないかのように、暴言を吐き続けた。

結局この時点でも何の進展も解決もしていない。ヨッシーとの取り決めを忘れたり、ある意味振り出しに戻ったようだった。

しばらくすると、剛はようやく落ち着いて、穏やかなじいさんに戻っていた。

タラモはここぞとばかりに、そして何となく話をそらすかのように、自分で調べたアルツハイマー型認知症の人にいいとされる、オススメ話を始めた。

お父さん、体力作りも大事だからね。ジムとか行けばいいのに」

やはり剛がほとんど外出しないことで、お隣とのトラブルが発生するリスクが増えるのは当然だ。

お隣の子供が庭で遊ぶ夕方に、剛が部屋にいなければいいのである。それにカラダを動かして、いろんなことを発散して欲しかった。

「オレもジムとか調べてたんだよ」予想外の返事だった。

そう剛は10年くらい前は町内のジムに通っていたのだ。その頃は度々その話をしていた。楽しかったのだろう。

ただ、残念ながら閉鎖してしまい、そこからは別のジムに行くわけでもなく、何もしてこなかったのだ。

剛自身も、自分なりに病気と向き合おうとしているのかな? タラモは少しだけ期待した。

台風

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