3前兆(中編)

2023.1.2

そしてそして、子供たちを送り届けて戻った美恵子に悲劇が起こった。鬼の形相で剛が待ち構えていたのである。そして暴言を吐いた。

「オレに恥をかかせたな!」またもあの台形の目。こわっ!なぜ恥なのかは謎だが。

その剛の鬼の形相を見て、美恵子は恐怖を覚えた。

初めて殺される・・・い、いや、私が殺すか・・・そう狂気の殺人事件が脳裏をよぎった。認知症で暴言を吐くじいさんを、たまらなくなったばあさんが包丁で刺すという光景が浮かんだ。かは勝手な想像だが、美恵子は怒りと恐怖が入り混じった感覚になった。

これは今に始まったわけではない。三女のリリ子は最近の剛のことで、美恵子から愚痴を聞いていた。

  • 何かを指摘するとすぐに逆ギレする
  • しかも罵倒するような言い方
  • 翌日コピー用紙に謝罪文を印刷して渡してくる

剛が頭に血が昇ってキレるのは以前からだが、最悪なことにここんところ頻繁になっている。しかも一番の問題は怒っているときのあの目、狂気の台形の目。

「殺される・・・やっぱお父さんは認知症かも・・・。でもお父さんプライド高いから病院には行かないわよ」と美恵子は弱気な発言。言ってもいないのに勝手な想像が湧く。怖いからな。

「もう、家にいたくない・・・」そう美恵子はじわじわとメンタルがやられ始めた。

この頃からマリモ、タラモ、リリ子の三姉妹は、そのことについて相談していた。さすがにみんな危機感を覚えていたのだ。

「このままではお母さん壊れちゃうよ。ホントさ、殺されるか殺すか、亀岡家殺人事件が起こらないように、何とかしなきゃだよ」

「そーだよ。そーだよね。やっぱお父さんは認知症なんだよ。早く病院に連れていかなくちゃ」

そうかなってみんな思ってたのよ。ただ信じたくなかったから。いや、それ以上に剛のボケが、誰もが恐れていた激昂型だったから、余計に目を背けていたのかもしれない。

みんなあの目で怒られたくないもの・・・。(後編へ続く)

お正月