
「お父さん、あっちで少し横になれば」
食事が終わると美恵子は、剛をキッチンから追い出した。
美恵子はそうとう狂気の『剛ネタ』がたまっているようだ。それはカラダに悪いので、すぐに吐き出した方が良さそうだ。
キッチンの扉を閉めたとたん、美恵子の口からは大量の老廃物があふれ出した。
「この前ね、初めて胸ぐら掴まれそうになったのよ」
マジか。とうとう暴力か。そこまできたか。
最悪な事態。現状は胸ぐらぐらいだが、これが進行したらどうなるんだろう。
「やだ、お母さん。気をつけてよ。そのうち殴られたり首絞められたりしそーじゃん。めっちゃ怖いんですけど」
「いや、その前にお母さんが包丁でやっちゃいそうよ」
「分かるうー」
「でもダメだよ。お願い。それだけはやめて。がまんして」
最近介護疲れで年老いたじいさんが、認知症のばあさんを殺害するとかいう事件増えてるからね。介護するだけでもそうとう大変なのに、介護される側が暴言吐いたりする。やりきれないよね。うちもそのタイプだな。最悪。
それとかもう疲れて疲れて、こいつを殺して自分も死ぬって決めて、死ねないやつ。切ないなあ。
「で、その後どうしたの?」
「逃げたわよ。逃げるしかないでしょ。このテーブルのまわりグルグル回ったわよ」
コントかよ。
「お父さん、足もたついてるからぜんぜん追いつけないからね。ホントちょっと押したら勝っちゃうけど、それはまずいでしょ」
うん、プライドもあるし、それこそ打ちどころによっては殺人事件になりかねないもんね。
昨年は剛の認知症により、ふさぎこんだ美恵子はうつ病になりかけた。一年たってとても頼もしくなった美恵子に少しだけ安心した。
まだ余談は許されぬが・・・。
4コマ漫画
夏休み

