35末っ子の力

そこからマリモとリリ子は、美恵子をどうにか病院へ連れて行こうと何度も何度も説得した。

もともと健康体なので、今までの人生病院にはあまり世話になっていなく、腰が重い部分もあったのかもしれない。

「お母さん、具合が悪くて1日中寝ているんじゃないのよ。寝ていればお父さんの声を聞かなくてすむから。もうちょっとも声も物音も聞きたくないの。寝ていれば何もわからないし、寝ているときが一番幸せなの」

これ、もちろん剛本人の前では言ってないけど。もうね、それが病気なのよ。しかも普通そこまで寝られないんで。

そんな美恵子にリリ子は強かった。末っ子の立場をちゃんとわかってるんだよね。

「お母さんが病院に行かないなら、お父さんに病院行けって言えないじゃん。お母さんが行かなかったらお父さんだって行かないよ!」

これは剛に対してもふっかけていた。剛もこれで美恵子が病院に行けば、自分も行かないわけにはいかないだろう。

それでも相変わらず頑固でブツブツ言う美恵子に、「お母さんが病院行かないのなら、ポン太とチャイに会わせない!」

美恵子が溺愛している孫を駆け引きに使ったのだ。そこまで切羽詰まっていた。病院に行かせたかった。

美恵子はしばらく黙っていた。なにやらいろいろ考えている。本当にこのまま食べないで死んでしまおうとしていたのかもしれない。その計画が狂ってきたのだ。

そしてとうとう観念したのだ。

「もー分かったわよ。明日病院行くから」

とりあえず良かったー。

リリ子がいなかったらマリモは説得できなかったな思った。押しが弱いんでね。リリ子に感謝しかない。

ネコ