61父の日の訪問

2026.6.21

「いやー、今日雨降らなくて良かったけど、やたら蒸し暑いね」

「気温はそんなに高くないのよ。湿度なのよ」

「暑いのが一番きついわー」

駅から実家までは徒歩だと20分くらいかかる。駅までは美恵子が車で迎えに来てくれるが、じっとしていてもじんわり汗ばんでくる。

マリモは、その暑さが緊張のせいか分からないでいた。

「こんにちわー」

「お父さん、久しぶりー」

実家に到着すると、マリモとタラモは声を1トーンあげ、明るく剛にあいさつした。昔のように、まるでボケていることを知らないかのように。

「おう、久しぶりだなー」

セーーーーーーーフ!!!

とりあえず私たちのことは覚えているようだ。

ただ半年ぶりに会った剛は、声がこもっていて滑舌が悪く、まさにじいさんの声だ。たった半年で何十歳も何十倍も老いた気がして、心配になるくらいだった。

しかも、剛のいるリビングは空気がこもっていて、めちゃくちゃ暑かった。

「暑っ!」タラモが思わず口走った。

「ん? 暑いか?」

マリモは「いや、この部屋めっちゃ暑いっすよ」と心のなかではツッコミながらも「今日、外めっちゃ暑いんだよ」と言ってこまかした。

なんか昔っから言えないんだよね。顔色ばっか伺っちゃって。

それに、よく言うじゃない。老人は暑さを感じないとか。それで熱中症で亡くなるとかニュースでやっているやつ。それがよぎってきて、あ、お父さんもそうなんだなと思ったわ。

いや暑いよね

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