68ギャン泣き

「こんにちわー」

リリ子は少し緊張しながら、実家の門をくぐった。

と同時にチャイが予想以上に早くグズり始めた。

「やーだ。やーだ。お家帰る」

いや、じいじがイヤというよりは。よそのお家がイヤなのかもしれない。

あーーーーまずいよ! まずい! まずい!

「チャイ、大丈夫だよ。じいじだよ」

「イヤーーーーーーーーーお家帰る!! ギャーーーーーーーー!!!!」

「ギャーーーーーーーーー!!!!」

「イヤーーーーーー!! キャーーーーーーー!」

「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

「ギャアーーーーーーーーーーガーーーーーーーーーー!!!」

もう耳がキーーーーーンとなるほどの声で、大粒の涙をこぼしている。

その時だった。

「なんなんだよ! うるせーーーーーーーーよ!!」

「あああーーーー、親のしつけがなってないんだよ!!」

「もう帰れーーー!!」

あー始まった。せっかく顔を見せに来たのに。何の情もないのよ。

リリ子は怒りと悲しみの中、子供を守るためにも強く

「もう二度と来ないよ。バイバーイ」と言い、なんと5分で退散したのである。

やはりアルツハイマー型認知症の症状として、音に敏感になる傾向がある。普通の人よりも大きく不快に感じられる。だから度々お隣の子供が騒いでいた時、怒鳴って問題を起こしてきた。

ただ、孫にもやるのか。絶望しかない。

それに「音」だけではないと思う。アルツハイマー型認知症により「情」も失われてしまった。

いや「情」だけじゃない。こういう時こう言ったらこうなるとか、可哀想とか、人として普通に考えられる部分が欠落してしまったのだと思う。

それによって、自分の大切な人を平気で傷つけてしまう恐ろしい病気なのである。

ギャン泣き

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